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「ディスポ鍼」と呼ばれる鍼をご存知でしょうか?鍼灸治療ではかなりポピュラーなもので、日本の治療院ではかなりの割合で使用されている鍼です。
この記事ではディスポ鍼の概要や、メーカーごとの使用感などをご紹介します。
ディスポ鍼とは
ディスポ鍼とは鍼灸治療に使われている鍼の一種です。鍼灸治療では様々な形、材質、大きさの鍼が使われています。この記事ではディスポ鍼について取り上げていますが、今後他の様々な種類の鍼を使うことになるはずなので、ぜひ他の鍼にも興味を持って調べてみてください。
このブログでも他の鍼について取り上げている記事がありますので、よろしければご覧ください。
ディスポ鍼の”ディスポ”の意味
そもそも「ディスポ鍼」は正式な名称を“ディスポーザブル鍼”と呼びます。ディスポーザブルとは、「処分可能な」という意味を持つそうです。他には以下のような意味合いが。
・使い捨てなどの処分が簡単な
・自由に使用可能な
・臨時雇用の
この言葉の意味からおおよそ連想できると思いますが、ディスポーザブル鍼は「使い切りの鍼」のことを指します。鍼の中には使用後に然るべき手順を踏んだ上で再利用するものもありますが、ディスポ鍼は使用後に使い回すということはありません。
ディスポ鍼の特徴
ディスポ鍼の特徴はステンレス製で、予め消毒されているという点です。ディスポ鍼を生産している工場で滅菌処理を行っているため、それぞれの鍼灸院によって消毒にバラつきがあるということもないので安心です。
また、滅菌後はすぐに包装されるので、空気に触れて汚れてしまうということもありません。使い捨てなので当然ですが繰り返して使うことはありませんし、菌が入ったり、感染症にかかったりしてしまうといったリスクはほぼ無いと言っていいでしょう。
ディスポ鍼は使い捨てということもあり、単価はとても安くなっています。とはいえ造りが安っぽいというわけではありません。耐久性があって折れにくく、非常に細い鍼なので患者さんも痛みを感じにくいのです。
このように衛生面以外でもクオリティが高く作られていますのでお客様にも安心して勧めることができます。
消毒などの衛生面に不安が無く、かつ満足度が高い施術を受けてもらいたいのであれば、ディスポ鍼を扱うことをおすすめします。こういったディスポ鍼の安全性・信頼性を日頃からお客様へ伝えることができていれば、「取り扱う道具の面からも、具体的にお客様の身体へ最大限配慮できている鍼灸院です」、といったアピールにもなるでしょう。
ディスポ鍼以外の鍼の消毒について
ディスポ鍼が世の多くの鍼灸院で使用されているのは確かですが、全ての鍼灸院で取り扱っているというわけではありません。つまり、使い捨てタイプではない鍼を使っている鍼灸院もあるということです。
ですが、使い捨てではないからといって衛生面に配慮できていないということではありません。確実な消毒・滅菌などの工程を経ていれば使い捨てでなくても安全性は担保されています。
実際、「オートクレーブ」という高温・高圧式の蒸気滅菌器を用いて鍼を使い回しています。オートクレーブは病原体を死滅させるレベルの滅菌処理を施せるため、この機器を使用して鍼の滅菌や管理を行っている鍼灸院であれば安心です。
しかし、中には「使い捨てタイプではないからきちんと消毒しているか不安」と感じられるお客様もいらっしゃるかもしれません。自身の鍼灸院でディスポ鍼を使用していないのであれば、オートクレーブや鍼の消毒に関して詳しくご案内しましょう。
院内の掲示物で日常的にそういった案内を置いていても良いですし、受診されるお客様に積極的に消毒についてのご案内を行っていけば、長く信頼される治療院となっていけるはずです。
現役鍼灸師によるディスポ鍼の使用感
様々なメーカーのディスポ鍼を使いながら比較し、使用感を簡単にまとめていました。ただし、あくまでも個人の感想ですのでご参考までに。
セイリン
鍼自体がしなやかで身体の筋の動きを感じ取りやすいです。鍼の動きの返り方で筋肉の質が掴めるのですが、これはしなやかなセイリンの鍼だからこそより感じ取りやすいのだと思います。
また、鍼先が丸く患者さんは痛みを感じにくいかと思います。ちなみにセイリンの鍼は片手の操作で簡単に外すことができ、見ただけで使用済みか否かが一目でわかるのも良い点です。
NEO
↑ NEOディスポ鍼(山正)一覧ページはこちらです(^^)!
NEOのディスポ鍼の鍼先は「松葉型」となっています。鋭さはありますが柔らかみも感じられ、スムーズに刺入ができる点が特徴です。鍼管、鍼柄が商品のタイプごとに色分けされていて、管理が容易な点も魅力的です。
ユニコ
鍼管部分が六角形で持ちやすく、安定感があります。柄はステンレス製となっております。もぐさを付けたりと汎用性が高く、幅広い用途に対応できますね。
弾力性がある鍼なので刺した時に身体から反発される感覚はありますが、逆に言えば固い筋肉には特にアプローチしやすいということになります。包装が剥がしやすくしてくれている点も魅力的です。
ファロス
1パック5本入りのパッケージとなっているため使いやすいです。1本取るたびに包装を開くタイプよりも、この形のパッケージに慣れると施術時間をより短縮できます。
ホルダーが付いていることで、鍼の折れ曲がりなどを防いでくれていたりと細かな点に気配りがされている商品です。
イッシン
鍼先は、肌に”すっ”と入る独自の鋭い鍼尖になっており、刺入時の切皮通が少なく患者様の負担が少ないと思います。操作のしやすい「すべり・硬さ・たわみ」になっています。番手ごとにベストな鍼先にすることで、番手の違いからくる操作性の違和感をなくし安定した治療をサポートします。
鍼管部分は押手がしっかり安定する肉厚構造で、菅の内径を狭くすることにより正確にツボを捉えやすくした作りとなっています。
ディスポ鍼の注意点
施術中や備品管理中に鍼を濡らしたり落としたりしてしまうといったこともあるかと思います。以下のようにディスポ鍼特有の注意点もありますのでお気を付けください。
包装済みのものが濡れてしまった場合
再滅菌可能であれば再度洗浄、滅菌を行います。再滅菌できないディスポーザブル製品は、使用できなくなります。
滅菌物を取り扱う前には汚染を防ぐために手指衛生を行うのが基本ですが、必ず充分に手指を乾燥させることも同じく重要です。
包装済みのものを落下させてしまった場合
落下によって滅菌包装が破損している可能性があります。再滅菌可能であれば再度洗浄、滅菌を行います。一方で、再滅菌できないディスポーザブル製品は、使用できなくなります。
滅菌物は落下させないように、取り回しに問題の無い環境を整えた上で丁寧に取り扱いましょう。
鍼灸現場における衛生面への配慮について
医療従事者の手指衛生に関しては監査・調査が行われるのは常ですが、鍼灸師が対象になることはあまりありません。これは鍼灸現場では病院ほど感染事故が起きにくく、これまで手指衛生行動の重要性がほとんど語られなかったためだと思われます。
しかし、近年では鍼灸医療安全ガイドラインが発刊され、鍼灸の臨床現場においても感染事故の防止対策を行うべきとする気運が高まってきています。
施術時の手指衛生の現状
東京医療保健大学の調査によると鍼灸師の手指衛生実施率は、鍼を刺す段階で88.5%と比較的高いものでしたが、鍼を抜く段階では 64.9%と低くなる傾向にありました。抜鍼時に実施率が低かったのは、抜鍼時にアルコール綿花を患者の皮膚に当てて鍼を引き抜くためです。
よって、患者に直接触れずに済むことから消毒を怠ってしまうのではないかと考えられました。しかし、触れる可能性は充分あるため、手指衛生は確実に行うべきです。
また、石けんで手を洗う時間は施術回数(忙しさ)よりも、「施術者の経験年数が増すことで短縮されてしまう」傾向が見られました。手を洗う時間が短いということは、正しい洗浄ができず、洗い残しがある可能性が高くなります。
こうした行いを是正するには、手洗い場に手洗いの正しい方法や入念な手洗いを奨励する貼り紙を貼る、などの対策が必要になります。
手指衛生上の課題の改善策
この調査から考えられる改善策としては、以下の2点が挙げられます。
1.手指衛生に関する再教育の機会を定期的に設ける。
2.施術者と患者の双方からの感染を防止するために、施術時にはグローブ、指サックなどの装着を習慣付けるよう呼びかけ、慣習としていく。
手指衛生はこのような現状となっていることを理解し、今後施術に臨まれる方は個人としても業界人としても、安全意識を高めていってもらえれば幸いです。
まとめ
ディスポ鍼の概要やメーカーごとの特徴をお伝えしてきましたが、お役に立つ情報はありましたでしょうか。使用感も良く、使い捨てであるために管理が楽に行えるという点は他の鍼と比べても魅力的です。
今後施術を行っていく方なら確実に手に取ることになるはずですので、早い段階から好みの仕様を見つけるためにも色々なメーカーを試してみることをお勧めします。