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鍼治療をおこなう場合、長い鍼で施術するイメージを持つ人もいると思いますが、皮内鍼という短いハリの一種を使うことで、長い鍼と同じ効果を得ることが期待できます。
最近は美容鍼といって、顔にハリを刺して美容効果を得る施術法も流行っています。では皮内鍼も顔に使えるのでしょうか。使えるとしたらどのように刺せばいいのでしょう。皮内鍼を使う際の注意点と併せて紹介します。
皮内鍼とは
皮内鍼は鍼灸治療に用いられる置き鍼(おきばり)の一種で、通常の鍼治療に使われる鍼とは異なり、刺したまま日常生活が送れるという特徴があります。
もともと鍼を長時間刺しておく「留置鍼(りゅうちしん)」と呼ばれる治療法がありました。
しかし、患者さんを長時間同じ姿勢で寝かせておくのは大変です。その結果、皮内鍼が開発されるに至ったのです。
皮内鍼を顔に用いるメリット
皮内鍼を顔に用いることには、おもに以下のようなメリットがあります。
痛みが少ない
皮内鍼は通常の鍼治療に用いられる鍼よりもかなり短いため、痛みが少ないです。そのため身体に与えるダメージも少ないというメリットがあります。
皮内鍼に似た鍼に円皮鍼と呼ばれる置き鍼があります。その円皮鍼は皮膚に対して垂直に刺入(鍼を刺すこと)するのに対し、皮内鍼は皮膚に対してほぼ水平に刺入します。
そのため、皮内鍼は人体の深い場所に入ることがありません。皮下組織まで届かないため、痛みが少ないのです。
自律神経調整効果が期待できる
もともと鍼治療は、自律神経の調整を目的としています。自律神経は交感神経と副交感神経の2つから成っており、両者がバランスを取ることで円滑な生命活動が維持されるのです。
交感神経は自律神経の一種で、身体にとってアクセルのような役目を持っています。瞳孔を開いたり、心拍数を増やしたり、汗をかいたりするのは交感神経の働きです。
副交感神経には交感神経とは反対に、身体のブレーキのような役目があります。瞳孔を閉じて心拍数を減らし、自然な睡眠に誘うのが副交感神経の働きです。
交感神経と副交感神経のどちらが重要かという訳ではなく、両者の切り替えが重要となるのです。日本人は交感神経優位型(緊張型)などと言われています。
簡単にいうと、オンとオフのスイッチの切り替えが下手なのです。自律神経で言うと、身体を休めるべき時間帯になっても、交感神経優位の状態が続いているということです。
交感神経優位の状態が続くと、自然な睡眠が訪れなくなり、睡眠の質が低下します。睡眠の質が低下すれば、身体の回復力も低下します。
皮内鍼によって交感神経を抑制し、副交感神経を優位にすることで、睡眠の質を高め、身体の回復力を高めることができます。
美顔効果が期待できる
夜更かしは美容の敵などと言われますが、その理由にも自律神経が関わっています。例えば、疲労やストレス状態が継続した場合、自律神経のうち交感神経が優位になります。
交感神経には車のアクセルのような働きがありますが、夜になっても交感神経優位の状態が続くと、アクセルを踏みっぱなしの状態になるため、睡眠の質が低下します。睡眠の質が低下すれば、お肌のコンディションにも悪影響を与えることとなります。
また自律神経のうち、副交感神経には胃腸の機能を活発化させる働きがあります。そのため、交感神経優位の状態が続いてしまうと、食べたものの消化・吸収にも悪影響を及ぼすのです。
特に女性の場合、胃腸の機能が低下することによって、便秘になるリスクが高まります。便秘になればニキビや吹き出物などができるリスクも増すのです。
鍼治療を含む東洋医学的な治療は、自律神経のバランス調整を大変得意としています。そのため、身体の内側から美顔効果を実現することが期待できるのです。
化粧のノリがよくなる
顔に皮内鍼を用いると、血流が増し、ターンオーバーが活発になります。ターンオーバーとは皮膚の新陳代謝(古いものが新しいものへと生まれ変わること)を意味します。
私たちの皮膚は常に生まれ変わっていますが、ターンオーバーの周期が乱れると、皮膚がちゃんと作られなかったり、剥がれおちるべき皮膚が剥がれおちなくなったりします。
その結果、化粧負けを起こしたり、化粧のノリが悪くなったりするのです。皮内鍼を顔に用いることでターンオーバーが正常化すれば、自然と化粧のノリが良くなるのです。
小顔効果が期待できる
前述の通り、皮内鍼をはじめ、東洋医学の目的は自律神経のバランスを整えることだと説明しました。そして、自律神経のバランスが整えば、全身の血流がスムーズになります。
顔にも当然血液が流れていますが、血液の流れが滞ることで老廃物を排出しにくくなり、結果として顔のむくみが生じるのです。
皮内鍼を顔に用いることで血行が促進されれば、むくみが解消して小顔効果も期待できます。ただし、皮内鍼を刺したからといって、魔法のように顔が小さくなる訳ではありません。
顔のコリの緩和が期待できる
「顔がこるの?」と思われる方もいるでしょうが、顔には「表情筋」と呼ばれる筋肉があります。その他の筋肉と同様、顔の筋肉も使わないとコリが生じます。
例えば、デスクワークなどパソコン作業を長時間おこなっていると、顔がこわばってきたことはありませんか? 顔の筋肉が緊張すると、周囲の血管を圧迫します。
それによって血行不良が起こり、むくみにつながるのです。顔に皮内鍼を用いることで表情筋の緊張を緩和し、血行を促進することが可能です。
皮内鍼を顔に用いるデメリット
皮内鍼を顔に用いると、以下のようなデメリットが発生する可能性があります。
内出血の可能性
皮内鍼は、通常の治療に用いる鍼や円皮鍼に比べると、比較的皮膚を傷つけるリスクが低くなります。ただし、内出血を起こすリスクがゼロという訳ではありません。
安全性への不安
皮内鍼はとても小さく、また円皮鍼とは違ってテープが付いていません。そのため取扱いには注意が必要です。特に小さなお子さんやペットがいる家庭では、細心の注意が求められます。
子供は何でも口にしますし、ペットの中でも犬を飼っていると、スキンシップの一環で飼い主を舐めます。舐めたところに皮内鍼があると、犬が誤飲しかねません。
妊婦さんは避けた方が良い
顔に皮内鍼を用いた場合、顔への血流が増すこととなります。すると、胎児へと送られるべき血液量が減少する可能性があります。
そのため、妊娠中は、顔に皮内鍼を用いることは避けた方が良いでしょう。
皮内鍼を顔に用いる際の注意点
皮内鍼を顔の用いる際の注意点について解説します。
食事直後の使用は避ける
鍼灸の施術に限ったことではありませんが、基本的に食事のすぐあとに施術を受けることは避けるべきです。
なぜなら、胃に血液が集まるのを妨げてしまうからです。自分で皮内鍼を用いる場合も、食後1時間は経ってからおこないましょう。
刺し方に気をつける
皮内鍼は鍼の部分と皮膚を傷つけないための「まくら」の部分、そして鍼と枕を固定するテープの3つに分かれています。それぞれのパーツが小さいため、ピンセットを用いて刺入するとよいでしょう。
また皮内鍼は通常の鍼治療に用いられる鍼や円皮鍼と異なり、ハリを皮膚に対してほぼ水平に刺すのがポイントです。垂直に刺すと痛みを生じるので気をつけましょう。
既往に注意する
鍼灸の施術は基本的に安全なものですが、場合によっては病気を悪化させるケースもあります。例えば重篤な心疾患や極度の高血圧、および低血圧などがある場合、鍼灸の施術をおこなうべきではないとされています。
健康状態にある人が皮内鍼を用いるのであればそれほど気にする必要はありませんが、病歴など心配な点がある人は、かかりつけのお医者さんに相談してから皮内鍼を使いましょう。
体調不良時は控える
高熱があるときや、ひどい疲労状態にある場合、鍼の効果はあまり期待できません。そのような場合、栄養をしっかりとって休むようにしましょう。
皮内鍼は安全性が高いので美顔効果を得たい人におすすめ
・皮内鍼は通常の鍼治療の鍼と異なり、刺したまま動くことが可能
・皮内鍼には自律神経調整効果や美顔効果、小顔効果などが期待できる
・体調不良時や妊娠中は避けたほうが無難
皮内鍼は通常の鍼よりも短いため、刺入の際の痛みが少ないです。
また顔に用いることで美顔効果や小顔効果など、さまざまな美容効果も期待できます。基本的に皮下組織まで届かないため、安全性が高いのもおすすめのポイントです。
健康な人であれば誰でも安心して使用できますが、元気がないときや、熱があるときは避けましょう。また病歴などが心配な人は、かかりつけの鍼灸院に相談してから皮内鍼を使いましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました(^^)。
今後ともメイプル名古屋を宜しくお願い申し上げます。