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みなさんはキネシオロジーテープというテーピングをご存知でしょうか。名前は知らなくても、スポーツ選手が肩や膝などに貼っているテープといえば、「あ、知ってる」という方もいるのではないでしょうか。
キネシオロジーテープは専門的な知識がなくても利用可能ですが、ちょっとしたコツを知っておくことで、サポート効果をより高められます。
そこで、今回はキネシオロジーテープを膝に貼るときのポイントと、膝の代表的なスポーツ外傷について紹介します。
キネシオロジーテープとは
そもそもキネシオロジーテープとは、どのようなテープなのでしょう。
運動学に基づいたテーピング用テープ
キネシオロジーテープは、運動学に基づいたテープです。関節ではなく筋肉の走行に注目し、身体を動かした時の筋肉への負担を減らしたり、運動時の筋肉のサポートをしたりするのが目的です。
スポーツ選手が肌色のテーピングをしているのを見たことがあるという人もいるのではないでしょうか。最近では赤や青、緑などカラフルなキネシオロジーテープも出てきていますが、大相撲などではテーピングが目立たないよう、肌色のものが多く使われています。
キネシオロジーテープの特徴
キネシオロジーテープは、伸縮性に富んでいるため、身体のどこの部分にもフィットし、体の動きをサポートできます。
またキネシオロジーテープは通気性にも富んでいます。そのため、長時間貼っていてもはがれにくくなっています。
キネシオロジーテープと通常のテーピングの違い
一般的にテーピングというと、関節を固定するようなイメージを持つでしょう。実際、足首をねん挫した場合などは、アンダーテープを巻いた上から、ほとんど伸縮性のないテープを巻き、関節をがっちりと固定します。
一方、キネシオロジーテープには関節を固定するような働きがありません。どちらかというと、筋肉の働きをサポートするために用います。
例えば、踵(かかと)からふくらはぎにかけてキネシオロジーテープを貼ると、下腿三頭筋の過度の収縮を防ぎ、こむらがえりや肉離れのリスクを下げます。
また筋肉の走行に沿ってテープを貼ることで、筋力を発揮するサポートもできるので、運動パフォーマンスの向上にもつなげられます。
キネシオロジーテープを利用する際の注意点
キネシオロジーテープを利用する際にはいくつかの注意点があります。
患部を清潔にする
キネシオロジーテープを貼る時には、患部を清潔にしておくことが重要です。運動をした後であれば汗を拭き、汚れがあるのならきれいに洗いましょう。
なぜ患部を清潔にしておく必要があるかというと、患部が汚れていたり汗で湿っていたりすると、すぐに剥がれてしまうからです。すぐに洗えないようであれば、消毒用アルコールで患部の周辺を拭きましょう。
テープを引っ張らない
キネシオロジーテープを貼る際に気を付けたいのが、テープを引っ張った状態で貼らないことです。
どうしてもテーピングには、固定するという先入観があるため、キネシオロジーテープも引っ張った状態で貼りがちです。
ただ通常のテーピングと違い、筋肉の働きをサポートすることがキネシオロジーテープの目的です。引っ張った状態で貼ってしまうと、筋肉の収縮をサポートすることができないので、かえって運動パフォーマンスを低下させます。
筋肉を伸展させた状態で貼る
キネシオロジーテープを貼るときには筋肉が伸びた状態にして、その上から優しく置くようなイメージで貼りましょう。筋肉が収縮したときに、テープにシワができるくらいでOKです。
シワができていると、ちゃんと貼れていないようなイメージをもたれるかも知れませんが、キネシオロジーテープに関してはそれくらいで大丈夫です。
入浴後は水分を拭き取る
キネシオロジーテープは通気性がよいため、貼ったまま入浴しても構いません。また2日か3日くらいであれば、貼りっぱなしでも問題ありません。
ただし、入浴した後にはタオルなどをキネシオロジーテープに押し当て、水分をしっかり拭き取りましょう。水分を拭き取っておかないと、テープが剥がれやすくなったり、かぶれの原因になったりします。
運動後は剥がす
キネシオロジーテープは、基本的に運動後は剥がすようにしましょう。というのも、運動をした後には汗をかいているため、テープがはがれやすくなっているからです。
かぶれたら使用を中止する
人によってはキネシオロジーテープを貼ることによって、かぶれが生じるケースもあります。そのような場合、すぐに使用を中止してください。
キネシオロジーテープを貼ると良い膝のスポーツ外傷例
スポーツをしているとさまざまなスポーツ外傷のリスクが高くなります。そこで、キネシオロジーテープを貼ると良い膝のスポーツ外傷例を4つ紹介します。
膝蓋腱炎
膝蓋腱炎(しつがいけんえん)は、大腿四頭筋(太ももの前側にある大きな筋肉の総称)の腱に過度の牽引力が加わることによって、腱周囲に炎症を起こし、痛みを生じる疾患です。
膝蓋腱炎は跳躍動作を繰り返すスポーツ選手によく見られることから、別名をジャンパー膝ともいいます。バスケットボール選手やバレーボール選手に多いスポーツ外傷の1つです。
鵞足炎
鵞足炎(がそくえん)は、薄筋(はくきん)、縫工筋(ほうこうきん)、半腱腰筋(はんけんようきん)の3つの筋肉が付着する、膝の内側に炎症を起こすスポーツ外傷です。
3つの筋肉の付着している場所が鵞鳥の足のように見えることから、鵞足炎という名前が付けられています。サッカー選手やマラソン選手などによく見られるスポーツ外傷です。
腸脛靭帯炎
腸脛靭帯炎(ちょうけいじんたいえん)は、大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)から移行した腸脛靭帯に過度の負荷がかかることで、膝の外側に痛みを生じるスポーツ外傷です。
長距離ランナーによく見られるスポーツ外傷であることから、ランナー膝の別名を持っています。基本的にオーバーユース(筋肉の使いすぎ)が原因となって起こりますが、身体が硬いことで発症リスクをさらに高めます。
大腿四頭腱付着部炎
大腿四頭筋腱付着部炎(だいたいしとうきんけんふちゃくぶえん)は、大腿四頭筋が腱に移行して付着する、膝蓋骨上部に炎症を起こすスポーツ外傷です。
バスケットボールやサッカーのように反復動作の多いスポーツや、バレーボールのように跳躍を繰り返すスポーツによく見られます。
膝蓋腱炎と似たような疾患ですが、大きな違いは膝蓋骨(いわゆる膝のお皿)の上に痛みが出るか、下に痛みが出るかです。膝蓋腱炎の場合、膝の下から脛の上部にかけて痛みが出やすいですが、大腿四頭筋腱付着部炎の場合、膝蓋骨の上部に痛みが出ます。
病院を受診するべき膝のスポーツ外傷
膝のスポーツ外傷の中には、テーピングで様子を見るのではなく、できるだけ速やかに病院や整形外科を受診した方がよいものもあります。そこで病院を受診すべき3つのスポーツ外傷を紹介します。
前十字靱帯損傷
前十字靱帯(ぜんじゅうじじんたい)は膝の前側にある靭帯で、すねの骨が過度に前へ行かないよう支えてくれている靭帯です。
主にバスケットボール選手やサッカー選手によく見られるスポーツ外傷で、ジャンプをした際の着地や、急な方向転換によって前十字靭帯を損傷します。
前十字靱帯損傷をした場合、手術をするのが一般的です。なぜなら、前十字靱帯損傷を放置していると、内側半月板損傷や靱帯損傷につながるリスクが上昇するからです。
側副靱帯損傷
側副靱帯損傷(そくふくじんたいそんしょう)も、病院を受診すべき膝のスポーツ外傷です。側副靱帯は膝の内・外側にある靭帯で、前者を内側側副靱帯、後者を外側側副靱帯と呼んでいます。
中でも内側側副靱帯損傷は、膝の靱帯損傷の中でも特に発症頻度が高く、ちゃんと治しておかないと、やはり内側半月板損傷などを発症するリスクが高くなります。
半月板損傷
半月板損傷(はんげつばんそんしょう)は、膝の内・外側にある、半月の形をした靭帯を損傷するスポーツ外傷です。特に内側半月板損傷の発症頻度が高く、その多くが前十字靱帯損傷や内側側副靱帯損傷と併発する形で起こります。
ジャンプからの着地に失敗したり、膝をひねったりすることで発症リスクが高まります。また高齢者の場合、日常生活で半月板損傷を引き起こすケースもあります。
キネシオロジーテープの対象は膝周囲の筋肉!
・キネシオロジーテープの目的は関節の固定ではなく筋肉のサポート
・キネシオロジーテープを貼るときには引っ張らないようにする
・キネシオロジーテープを貼るべき外傷は筋損傷であり、靱帯損傷の場合は速やかに病院を受診すべき
キネシオロジーテープは、通常のテーピングとは異なり、筋肉をサポートする目的で用います。そのため、通常のテーピングのようにきつく巻かずに、筋肉にふんわりと乗せるようにして使います。
キネシオロジーテープによって怪我のリスクを下げたり、運動パフォーマンスを向上したりすることが可能ですが、対象はあくまでも筋肉なので、靱帯損傷が疑われる場合は、速やかに病院を受診してください。