鍼灸院を開業する際は、保健所の検査を受けることになります。
保健所の検査とは、具体的にどんな点をチェックされるのでしょうか。
ここでは構造設備基準を中心に詳しく見てみましょう。
□構造設備基準とは
「構造設備基準」とは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師に関する法律施行規制第25条及び柔道整復師法施行規則第18条により規定されたものです。
鍼灸院の開業手続きに際し、保健所から渡される「施術所開設の手引き」に書いてある構造設備基準は以下のような内容です。
・6.6平方メートル以上の専用施術室を有すること。
縦2メートル、横3メートルと少しのスペースですから、それほど広くなくても許可されることがわかります。
・3.3平方メートル以上の待合室を有すること。
こちらは施術室の半分の広さですから、それほど広くありません。
むしろ窮屈に感じるスペースです。
・施術室は室面積の7分の1以上に相当する部分を外気に開放できること。
ただし、適当な換気装置があればよい。
施術室は、床面積の7分の1以上の窓があればいいわけです。
また、窓がなくても換気扇があれば許可されるということです。
・施術に用いる器具や手の消毒設備を有すること。
消毒用の綿花や、消毒用のアルコールが常備されていれば問題ありません。
※鍼を使う場合は、オートクレーブ・乾熱滅菌器具等を設置して殺菌、滅菌に努めること。ただし、使い捨ての鍼を使用する場合は、使用済み鍼の保管と廃棄を適正に行うこと。
・施術所は、住居・店舗等と構造が独立していること(出入口を別に設けるなど)。
(指導基準による)
自宅の一室で施術する場合の規制です。
患者の出入口と鍼灸師の家族が出入りするドアは、別にしなければならないということです。
出入口だけでなく、通路も共用してはいけません。
つまり、患者と家族が顔を合わさずに出入りできて、通路を歩ける構造になっている必要があるということです。
・施術室と待合室の区画は、固定壁で上下左右完全に仕切られていること。
(指導基準による)
指導基準による指導ですから、自治体によっては固定壁でなくても許可される可能性があります。
・ベッドを2台以上設置する場合は、各々カーテン等で仕切り、患者のプライバシーに配慮すること。
(指導基準による)
プライバシー配慮は当然のことですが、これも指導基準による指導ですから、自治体によって若干の違いがあるかもしれません。
指導基準は構造設備基準より緩いものですが、各自治体などで定めた基準で、構造設備基準を遵守した上で指導基準にも従わなければなりません。
そのため、鍼灸院開業にあたっては、指導基準について管轄の自治体に確認する必要があります。
また、鍼灸院と柔道整復を両方行う施術院は、双方の施設を固定された壁で分ける必要があります。
ただし、あん摩マッサージ指圧・はり・きゅうと、柔道整復の免許を持つ施術者が1人で施術する場合は、施術室を兼ねられます。
待合室もできれば別々にするほうが望ましいものの、十分なスペースがあれば共用することも可能です。
ただし、施術院内では整体やカイロ・プラクティックなど、他の医療類似行為を行えません。
また、施設の区画や使用する器具、広告などを共有することは許可されません。
このほか、消化器が設置されているか、看板が見える場所に設置されているかもチェック対象になります。
このほか、はり師、きゅう師の免許は、誰でも見える場所に飾っておくことも保健所から指導があります。
□保健所の検査の流れ
まず、保健所に鍼灸院開業届の書類を取りに行きます。
保健所では開業届の書き方を教えてくれたり、「施術開設の手引き」という小冊子に記載されている内容について説明してくれます。
鍼灸院開業のためにテナントを探す人は、この手引きに書かれた基準を満たす物件を探さなければなりません。
自宅で開業する人は、手引きの基準に合わせて、部屋の広さなどを測っておく必要があります。
保健所に行ったら、ついでに「施術所開設届」などの届出用紙ももらっておきましょう。
自宅に帰り、届出用紙に必要事項を記入したら、保健所に提出します。
後日、保健所の職員が鍼灸院を訪問して開業基準を満たしているかどうか、構造設備基準に合わせて各部を点検します。
具体的には、施術室や待合室の広さをメジャーで測ります。
そして、施術室に窓があれば窓の面積を測り、施術室の7分の1以上の面積があるかどうかチェックします。
窓がなければ換気扇の有無をチェックし、消毒設備などが整っているかチェックします。
検査の結果問題がなければ、「開業届の副本」を渡され正式に開業が許可されます。
なお、保健所の検査は開業して、患者が入っている状態でも受けられます。
つまり、保健所の検査がなくても施術できます。
□税務署の手続き
鍼灸院開業の際に、保健所の次に手続きが必要なのが税務署です。
保健所で開業手続きが終わり、開業許可がもらえたら、今度は税務署に行きましょう。
税務署で必要な書類は以下の2点です。
・個人事業の開業・廃業等届出書
・所得税の青色申告承認申請書
ちなみに、所得税の青色申告は白色申告でもかまわないので、どちらがいいかはケースバイケースということになります。
税務署の手続きは保健所の手続きほど急がないので、保健所を優先して税務署はあとから手続きするようにしましょう。
□保健所手続きの重要性
鍼灸院の開業には保健所と税務署の手続きが必要ですが、開業する人にとって重要なのは保健所の手続きです。
保健所ではいろんなチェックを受けることになり、すべての項目について合格をもらえないと、開業できなくなります。
施術室や待合室は広さも明確に決められているので、それを満たさないテナントでは開業許可が下りません。
テナントを借りてから開業できないことがわかったら、それこそ一大事です。
そのため、鍼灸院を開業しようと思ったら、まだ何も具体的な行動をしないうちから、保健所に行って関連書類や資料をもらっておくといいでしょう。
また、保健所の職員の中には鍼灸院の開業について詳しい人がいますが、逆に言うとすべての職員が鍼灸院の開業について熟知しているわけではありません。
そのため、鍼灸院開業について保健所に書類をもらうことや相談に行く場合は、鍼灸院開業に詳しい職員に応対してもらえる時間帯を確認してから、行くようにしましょう。
そうしないと、担当職員が不在だったりすると、また出直さなくてはならなくなります。
鍼灸院開業時はただでさえ忙しいので、なるべく無駄足にならないようにしたいものです。
□まとめ
鍼灸院を開業するには、保健所の手続きと検査が必要です。
構造設備基準により、開業する鍼灸院の広さや設備について、細かいチェックが入ります。
具体的には施術室の広さや待合室の広さ、施術室の換気や消毒設備が整っているかなどです。
特に自宅の一部を改装して鍼灸院を開業する場合は、家族と患者の出入口を別にして、中の通路も家族と患者が顔を合わせない作りにすることが求められます。
このような、細かいチェックに合格しないと鍼灸院が開業できないので、開業者にとっては保健所の手続きと検査は非常に重要です。
保健所と前後して税務署の手続きもしなければなりませんが、優先すべきは保健所の手続きです。
保健所の手続きに不備があったり、検査に合格できないなどの問題があると、開業そのものが遅れたり開業できないこともあります。
まず保健所の手続きを済ませ、開業許可を受けてから税務署の手続きに入りましょう。
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