鍼灸院を開業するためには、どのような手続きが必要なのでしょうか。
鍼灸院を開業するのは、多くの鍼灸師にとって夢であり目標でもあります。
しかし、いざ開業しようとしても、手続きの方法が複雑でわからないことが多いものです。ここでは、鍼灸院を開業するための手続きについてご紹介します。
□鍼灸師とは
鍼灸師とは、はり師やきゅう師とも呼ばれています。
東洋医学や漢方医学に基づき、全身にあるツボを鍼やお灸で刺激します。
そして、人間が本来持つ自然治癒力を高める治療です。
高度な知識と技術が必要なため、専門的な教育を受けた後に国家資格に合格する必要があります。
近日、世界保健機構や米国国立衛生研究所が鍼灸による有効性を認めたため、効果が証明されています。
日本では、神経痛やリウマチ、五十肩、腰痛などの疾患が健康保険の療養費支給対象となっています。
□設備構造基準を満たした物件を探す
鍼灸院を開くために借りるテナント物件は、立地がよく駅からも近い物件を探そうとするのが普通ではないでしょうか。
もちろん、多くの人に利用してもらうためには、立地や交通のアクセスも重要ですが、鍼灸院を開業するためには、その前にクリアしなければならない問題があります。
それが、設備構造基準を満たした物件を探すことなのです。
設備構造基準とは、鍼灸院を開業するために必要となる基準で、これを満たさないと開業許可が下りません。
設備構造基準は法律によって定められたものですが、これ以外に各自治体で独自に条例が設定されている場合もあるので、必ず自治体に確認する必要があります。
では、設備構造基準とはどんなものでしょうか。
法律では、設備構造基準は以下のように定められています。
・6.6平方メートル以上の専用の施術室を用意する。
・待合室は3.3平方メートル以上のスペースを確保する。
・施術室は部屋の面積の7分の1以上を外気に解放できるか、十分な換気設備を用意する。
・施術に用いる手・指・器具等の消毒設備を用意する。
・常に清潔が保たれている。
・採光・換気・そして照明を十分にする
また、設備構造基準とは別に、「指導基準」による指導もあります。
これは各自治体によって多少違いますので、開業時には自治体に確認を取るほうがいいでしょう。
□広告の規制
鍼灸院の看板や印刷物などが対象となる規制です。
・施術者である旨、ならびに施術者の氏名及び住所
・法律第1条に規定されている業務の種類
・施術所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項
・施術日、または施術時間
・その他厚生労働大臣が指定する事項
これらについて規制されています。
また、施術者の技能や施術方法、経歴については広告することが禁じられています。
さらに、料金を表示することも禁じられており、施術による効果や効能も記載できません。
このほか、「〇〇流」といった施術法の表記や、「各種保険取り扱い」などの表示も禁じられています。
このように、鍼灸院の広告に関してはかなり厳しい規制が設けられています。
□店名に関する規制
鍼灸院の名称は、何でも勝手につけられるわけではありません。
こちらも広告同様に、いくつもの規制があります。
鍼灸院には、「〇〇病院」といった名称は使えません。
これは、一般の病院とまぎらわしいというのが禁止の理由です。
また、「はり科」「きゅう科」など、「科」という字も病院と混同しやすいために規制されています。
□開業手続き
鍼灸院を開業する前に、まず管轄の保健所に事前相談に行くことをお勧めします。
いざ、治療院が完成し届出を提出するといった際に、書類や設備等が不足してしまうと大変です。
スムーズな開業手続きのためにも、事前に保健所へ相談へ行きましょう。
ここまでの手順が済んで、ようやく開業にこぎつけられます。
鍼灸院を開業したら、10日以内に保健所に開設届を出すことが義務付けられています。
もし開業から10日以上過ぎてしまったら、10日以内に提出できなかった理由書を添えて、提出しなくてはなりません。
□開業に関する届け出の提出先
提出先は保健所・税務署・都道府県税事務所の3か所です。
保健所には開業の許可を得る手続き書を提出します。
税務署には個人事業の開業・廃業等届出書と所得税の青色申告承認申請書を提出します。
都道府県税事務所には個人事業税の開業・廃業・休業・異動申告書を提出します。
順番などはとくにないため、自分の行きやすい場所から足を運ぶと良いでしょう。
再度行く時間のない方には、書類をもらったその場で記載して手続きすることをおすすめします。
□立入検査
保健所に開設届を出すと、保健所の立入検査を受けます。
検査では、届出通りの内装や設備が整っているかなどについて、調査が行われます。
立入検査をクリアすると、副本の交付を受けられます。
開設届からここまで、順調に進んだとしても1カ月ほどかかります。
そのため、これほど時間がかかることは、前もって知っておいたほうがいいでしょう。
□開業後に必要となる手続き
開業してしばらくたって、ベッド数を増やしたり内装を変更したり、鍼灸院のスタッフを増やす場合や、新たな施術サービスを追加する場合などは、「施術所開設届出事項中一部変更届」の提出が必要です。
構造設備に変更がある場合は、変更後の平面図を添付しなければなりません。
また、施術スタッフが増えた場合は、免許証の写しと原本を持参して手続きすることになります。
ところで、出張施術をメニューに加える場合は、何も届出の必要はありません。
ただし、鍼灸院を開業せずに出張施術だけを行うには、「出張施術業務開始届」を出す必要があります。
また、開業してから必要になる可能性のある手続きには、以下のものがあります。
・氏名の変更:戸籍謄本の提示、または免許証が書き換え済みの場合は免許証
・施術所の休止:施術所休止届を10日以内に提出
※休止期間は原則1年以内。
・施術所の再開:施術所再開届を10日以内に提出
※免許証の原本も併せて提示。
・施術所の廃止:施術所廃止届を10日以内に提出
このように、鍼灸院を開業するには数々の手続きが必要となります。
しかも手続きには時間がかかるものも多いため、そのことを知らないとテナントを借りたのに開業できず、テナント料だけ払う羽目にもなりかねません。
このような事態にならないためにも、しっかり事前準備をしておく必要があります。
これだけの複雑な手続きを、事前準備なしにスムーズに進めるのはまず不可能ですから、下調べをすることはもちろんですが、可能であればすでに開業している先輩などに、アドバイスしてもらうといいでしょう。
□まとめ
鍼灸院を開業するには、まず設備構造基準を満たした物件を借りる必要があります。
この基準を満たすテナントでないと、鍼灸院を開業できないので注意が必要です。
設備構造基準は法律によって定められたものですが、これ以外に各自治体で独自に条例が設定されている場合もあります。
また、鍼灸院には広告の規制や名称の規制があるので、事前に調べておきましょう。
開業手続きは、まず保健所に事前相談に行き、担当の保健所職員に捺印をもらわないと開業許可が下りません。
さらに、開業したら10日以内に、保健所に開設届を提出することが義務付けられています。
その後保健所の立入検査があり、これをクリアしてようやくすべての開業手続きが終了します。
開設届からここまで、順調に進んだとしても1カ月ほどかかります。
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