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最近は家庭でも台座のついたタイプのお灸がよく使われていますが、その中にはもぐさが入っています。昔は一般の家庭でも、もぐさを用いたお灸をよくおこなっていたものです。
ところで、もぐさとはそもそもどのようなものなのでしょうか。今回はもぐさとは何なのかを紹介し、その効果について徹底解説します。
もぐさとは
もぐさはヨモギの葉の裏に付着している綿毛を主原料として作られています。
日本でもヨモギはもちを作るときに用いられたり、葉を揉んで傷口に張り付けたりと、古来より私たちにとって身近な存在です。
もぐさの特徴
もぐさの特徴は、可燃性に富んでいるのにも関わらず、燃焼がゆっくりと進行するという点です。
その特性を活かし、中国では2000年以上も前から、お灸が中医法に取り入れられています。
もぐさに含まれる成分
もぐさに含まれている成分としてよく知られているのが、シネオールと呼ばれる成分です。シネオールはローズマリーやユーカリの葉にも含まれています。
シネオールはさわやかな香りを特徴としているため、化粧品や食品添加物、香料として利用されるほか、咳止めやマウスウォッシュなどにも配合されることがあります。
良いもぐさと粗悪なもぐさの違い
良いもぐさと粗悪なもぐさは、簡単に識別することができます。見分けるポイントは見た目と、触った時の質感です。
良質なもぐさは淡い黄色をしており、最高級品になると山吹色をしています。一方、粗悪なもぐさは褐色を呈しており、粗悪になればなるほど黒ずんでいきます。
また、質の良いもぐさはふんわりと柔らかく、軽いのが特徴です。そのため、火をつけたときにすぐ燃焼します。一方、粗悪なもぐさは湿気を含んで重いため、火の付きが悪いのが特徴です。
ただ、お灸の種類によっては、火の付きが悪くて、燃焼温度が高くなるお灸が向いているケースもあります。
もぐさに期待できる効果① 血行を促進
もぐさを身体の冷えているところや筋肉が固くなっている場所に置き、火を点じることで、血行を促進する効果が期待できます。
もぐさが血行を促進するメカニズム
筋肉には関節を動かす働きの他に、体温を生み出したり、血液の循環をサポートしたりする働きがあります。
ところが、冷えや筋緊張などが生じると、筋肉が冷えて固くなってしまい、その結果、全身の血行が悪くります。
もぐさを使ったお灸法の代表的なものが知熱灸(ちねつきゅう)ですが、その名のとおり、お灸の熱によって固くなってしまった筋肉が緩み、血行が促進されるのです。
血行を促進すれば美肌効果が期待できる
お灸によって血行が良くなれば、新陳代謝が促進されます。新陳代謝とは、古いものが新しいものに生まれ変わることです。私たちの体内では、新陳代謝とは細胞の生まれ変わりを意味します。
血行不良によって新陳代謝が不活発になった場合、お肌のターンオーバーが乱され、吹き出物やニキビのリスクが高くなります。女性の悩みの1つである肌荒れも、ターンオーバーの周期の乱れが原因です。
ターンオーバーの周期はおよそ「年齢×1.5」(日)とされています。そのため、自分の年齢に合ったターンオーバーの周期が守られていることが重要なのです。
もぐさを用いたお灸によって新陳代謝が活発化すれば、乱されたターンオーバーの周期が正常化し、お肌の状態を改善する効果が期待できるのです。
血行促進によって肩こりや腰痛を予防
筋肉が緊張して固くなると、筋緊張によって血管が圧迫され、「筋阻血(きんそけつ)」が起こります。筋阻血が起こった場所には「痛み物質」が産生されるのですが、それが肩こりや腰痛などの原因となるのです。
痛み物質は筋肉痛のようなチクチクとした痛みを発するのですが、血行が悪いと排出されずにとどまります。血行が悪いままだとさらなる筋阻血を招き、さらに痛み物質を産生し…といった具合に、悪循環が起こります。
お灸をすることで筋肉の緊張を緩和し、筋阻血を取り除くことができれば、痛み物質を排出しやすくなるので、肩こりや腰痛の予防にもつながるのです。
もぐさに期待できる効果② 自律神経のバランスを調整
東洋医学の施術はそもそも、自律神経のバランスを調整する目的でおこなわれていますが、もぐさを用いたお灸にもその効果が期待されています。
もぐさで自律神経のバランスを調整するメカニズム
日本人の8割が交感神経型などと言われますが、交感神経は副交感神経とともに自律神経を構成しています。交感神経は車のアクセルに例えられることが多く、副交感神経は同様にブレーキに例えられることが多いです。
活発的に行動する日中には交感神経が優位になり、身体を休めて就寝する夜間には副交感神経が優位になるというわけです。
ところが、ストレスや眼精疲労、筋緊張などが原因で、夜間になっても交感神経優位の状態が続くと、寝る時間帯になっても「アクセルを踏みっぱなし」の状態になります。
もぐさを用いたお灸をすると、そのリラクゼーション効果によって、副交感神経を優位にすることが期待できます。その結果、自律神経のバランスを整えることにつながるのです。
交感神経が優位になると血行不良を誘発する
交感神経が優位になると、血管が収縮して血行を悪くしてしまいます。そして、血行が悪くなることで、冷えや痛み、新陳代謝の不活発化につながるのです。
もぐさを用いたお灸で血行を促進できれば、そのような不調を未然に防ぐことが可能です。また、お灸の温熱効果によって、副交感神経を優位に導くことが可能となります。
自律神経のバランスが整うことで期待できる効果
自律神経のバランスが整うことで期待できる最たるものが、睡眠の質を高められるということです。お医者さんもよく言うように、睡眠に勝る身体の回復法はありません。
私たちが寝ているとき、体内では成長ホルモンが分泌されます。成長ホルモンというと、成長期に分泌されるようなイメージがあるかもしれませんが、私たちの生命活動が続く限り、成長ホルモンは分泌され続けます。
成長ホルモンには筋肉や骨を作ったり、たんぱく質の合成を促したりする働きがあります。そのため、お灸をすることで自律神経のバランスが整えば、身体の回復を早める効果が期待できるのです。
もぐさに期待できる効果③ 不調改善
東洋医学では「冷えは万病のもと」とされており、不調の表れている場所には、必ずと言ってよいほど、血行不良が見られるとされています。そのため、もぐさを使ったお灸によって、不調を改善する効果が期待できるのです。
もぐさでなぜ不調を改善できるのか
東洋医学では、「気血」の滞った場所に不調が表れるとされています。西洋医学的に見た場合、気血が滞っているとされる場所には血行不良が見られ、疲労物質や老廃物が溜まっています。
血行が悪くなると疲労物質や老廃物を流せなくなり、さらに疲労物質や老廃物が蓄積するという悪循環に陥るのです。そして、疲労物質や老廃物がたまりにたまった結果、局所の不調が表れることとなります。
そのため、お灸や鍼治療によって滞った疲労物質や老廃物を流すことで、不調を改善する効果が期待できるというわけです。
もぐさには精油成分が含まれており、燃焼させることでさわやかな芳香を生じます。その香りによってリラクゼーション効果を得ることも可能です。
身体がリラックスすれば副交感神経が優位になり、血管が拡張します。そのため、血行を促進し、不調を改善したり自律神経のバランスを整えたりできるのです。
もぐさを利用するメリットとデメリット
もぐさには様々な健康効果が期待できますが、あえてもぐさを使うメリットは何でしょう。また、デメリットもあるのでしょうか。
メリット
もぐさを利用するメリットはズバリ、コストパフォーマンスが高いということです。
家庭用のお灸には貼って使える台座灸などもありますが、もぐさの量に着目した場合、自分でもぐさをひねってお灸した方が安上がりです。
デメリット
もぐさのデメリットは、上手に使わないとやけどをするリスクがあるという点です。もぐさは直接皮膚の上に置いて使うため、取るタイミングを誤ると、やけどのリスクが高くなります。
やけどが心配な方は、スライスしたショウガを皮膚の乗せ、その上にもぐさを置いて火を点じるとよいでしょう。また、せんねん灸などの台座灸も貼って使えるので便利です。
もぐさを上手に使って自己治癒力を高めよう
・もぐさは可燃性が高い割にゆっくりと燃焼が進むのでお灸に向いている
・もぐさを用いたお灸には血行を促進する効果がある
・お灸をすると自律神経のバランスを整えたり不調を改善したりする効果が期待できる
・もぐさによるやけどが心配な場合は台座灸がおすすめ
現在では病院に行って薬をもらうのが当たり前になっていますが、それ以前はむしろ、鍼やお灸で治療したり、漢方薬を服用したりするのが当たり前でした。
特に日本では、お灸は奈良時代からおこなわれており、我が国を代表する治療法の一種でした。その効果は現在になっても変わることはなく、多くの方がもぐさを愛用しています。
お灸にはまだ解明されていない点も多くありますが、温熱作用によって血行を促進することで、様々な健康効果が期待されています。
もぐさは安価で購入できるので、自分で自分の体調を管理するのにおすすめです。やけどが怖い方はせんねん灸などの台座灸を利用するとよいでしょう。