デスクワークが主流となった昨今、長時間パソコンに向かっていると、腰痛が出ることも多いでしょう。
厚生労働省の発表によると、成人のおよそ5人に1人が腰痛持ちとされています。

そんな腰痛に針治療がおこなわれるケースもあります。
では、どのような腰痛に針治療が効果を発揮するのでしょうか。

腰痛の予防法とあわせて紹介します。

針治療の効果が期待できる腰痛その1・急性腰痛

急性腰痛は正確に言うと急性腰痛症、いわゆるぎっくり腰のことを意味します。
針治療の効果が期待できる急性腰痛にはいくつかのタイプがあります。

殿筋タイプ

殿筋タイプの急性腰痛は、殿筋群(お尻の筋肉)や、その周辺の緊張によって発症します。

代表的な筋肉としては大殿筋や中殿筋、梨状筋などがあげられます。

大殿筋はお尻にあるもっとも大きな筋肉です。
大殿筋は大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)から移行する腸脛靭帯(ちょうけいじんたい)に付着しています。

中殿筋や梨状筋は大腿骨の大転子(いわゆる股関節)に付着しており、これらの筋肉が固くなることで、股関節の動きが制限されます。

股関節の動きが固くなることで、地面からの衝撃を受け止めるクッション機能が低下し、結果として急性腰痛発症のリスクが高くなるのです。

殿部には厚い脂肪の層があるので、長い針を使うことで効率よく殿筋群や梨状筋を緩められます。

腸腰筋タイプ

腸腰筋は、腸骨筋(ちょうこつきん)と大腰筋(だいようきん)の総称です。
腸骨筋は大腿骨の小転子に付着しており、大腰筋は腸骨筋と合体し、やはり大腿骨の小転子に付着しています。

腸腰筋はおなか側で腰や骨盤と股関節を結んでいるのですが、この筋肉が固くなることで股関節が外旋します。
股関節が外旋すると骨盤が後傾するため、腰にかかる負担が増すのです。

腸腰筋はタイプの腰痛の特徴は、腰をまっすぐ伸ばそうとすると痛みが出る点です。

そのため、腰を曲げたような姿勢を取る傾向があります。

腸腰筋はかなり深い場所にある筋肉なので、マッサージや指圧を施しても筋肉まで届きません。
そんな時に、針治療で用いる長鍼(7.5㎝~10.5㎝)が役立ちます。

腰方形筋タイプ

腰方形筋は12番目の肋骨と骨盤とを結ぶ筋肉です。皆
さんが腰痛と聞いたときに一番イメージ
しやすいのが、腰方形筋タイプの腰痛ではないでしょうか。

腰方形筋タイプの腰痛の特徴は、腰を左右にひねったり、寝返りを打ったりすると痛みが出るという点です。

腰方形筋は広い範囲にまたがる筋肉なので、外側から内側に向けて針を刺すことで、効率よく筋緊張を緩めることが可能です。

インナーマッスルタイプ

近年インナーマッスルという言葉をよく耳にするようになりました。
腰部のインナーマッスルとして大腰筋が取り上げられることもよくありますが、大腰筋はインナーマッスルではありません。

インナーマッスルとは、骨に付着するとても小さい筋肉のことであり、腰部だと多裂筋(たれつきん)や棘筋(きょくきん)、半棘筋、回旋筋などを指します。

これらのインナーマッスルが固くなることで、腰椎の可動域が狭くなります。
その結果、身体を前に傾けても後ろに反らしても痛みを誘発することとなるのです。

インナーマッスルはとても小さい筋肉なので、指先で指圧を加えるより、針を用いてピンポイントで刺激する方が効率的です。

針治療の効果が期待できる腰痛その2・慢性腰痛

日本人の多くが慢性腰痛に悩まされていますが、職業や姿勢によって腰痛の出方やその原因が異なります。

では、どのような人にどんな腰痛が見られるのでしょう。

デスクワークによる腰痛

デスクワークが主流となってから、腰痛に悩まされる人が増えています。
その特徴として、ハムストリングスの筋緊張があげられます。

ハムストリングスは太腿の裏側にある大きな筋肉の総称です。
長時間デスクワークをおこなっていると、ハムストリングスが収縮して固くなります。

ハムストリングスは坐骨結節(ざこつけっせつ:骨盤の下端にある骨)にくっついているため、固くなると骨盤を後ろに傾けてしまいます。
その結果、慢性腰痛のリスクが増すのです。

デスクワークが原因の慢性腰痛の場合、腰だけでなくハムストリングスも針治療で緩めることが重要です。

立ち仕事による腰痛

長時間立ち仕事をしていると足の筋肉が緊張するものですが、特にふくらはぎの筋緊張が腰痛につながるケースもあります。

人間の身体には筋膜と呼ばれる「第二の骨格」があり、ボディスーツのように全身をくまなく覆っています。

そして、筋膜の緊張によって離れた部分の症状を発するケースがあるのです。

ちょうどふくらはぎの中心に「承山(しょうざん)」という腰痛の特効穴がありますが、承山が腰痛のツボであるのも、筋膜理論の裏付けと言えるかもしれません。

猫背からくる腰痛

猫背になると、骨盤が後ろに傾くため、慢性腰痛だけで、肩こりや頭痛のリスクも増します
猫背の原因は様々なので、原因に応じた針治療が必要となります。

針治療の効果が期待できる腰痛その3・腰部関連の疾患

腰部関連の疾患はまず病院や整形外科で診てもらうことが一番ですが、確定診断が下されても、針治療で症状を緩和できるケースがあります。

坐骨神経痛

坐骨神経痛は、実は病名ではありません。
坐骨神経沿いに痛みやしびれが出る現象をそう呼んでいるだけで、言い方は悪いですが、何も診断されていないのと一緒です。

坐骨神経は人体の中でもっとも長い神経で、仙骨(骨盤中央にある骨)から下腿まで伸びています。

そして、坐骨神経が走っている場所のどこかで筋緊張が起きると、神経沿いに痛みやしびれが出るわけです。
その筋緊張の場所を針治療で緩められれば、症状の緩和が期待できます。

脊柱管狭窄症

脳から出た神経は背骨の中を通りますが、その通り道のことを脊柱管(せきちゅうかん)と呼んでいます。
脊柱管狭窄症は、その通り道が狭くなる疾患で、腰痛や下肢のしびれが主な症状です。

脊柱管狭窄症の特徴として、痛みよりもしびれが目立つ傾向にあります。

また、間欠跛行(かんけつはこう)といって、10分ほど歩くと疲れて歩けなくなり、しばらく休むとまた歩けるようになるということを繰り返します。

脊柱管の狭くなった部分を根本的に改善するためには手術が必要です。
ただ、しばしば脊柱管が原因ではないのに、脊柱管狭窄症のような症状が現れるケースもあります。

また、狭窄自体が筋緊張の結果としてもたらされるケースもあり、そのような場合、針治療によって症状を緩和できることがあります。

梨状筋症候群

梨状筋症候群も、坐骨神経痛と同様、症状名ではなく現象を説明しているにすぎません。
臀部にある梨状筋という大きな筋肉が坐骨神経を圧迫することで、臀部の痛みや下肢のしびれを誘発します。

梨状筋もお尻の深い場所にある筋肉なので、長めの針を用いて筋緊張を緩和するのが効率的です。

腰椎椎間板ヘルニア

5つある腰椎(腰の骨)の間には、椎間板と呼ばれるクッションがあります。
そのクッションに不均等な圧力が加わることにより、中から髄核が飛び出すと、神経を圧迫して痛みやしびれを誘発します。

これが腰椎椎間板ヘルニアの特徴です。
ただ、ヘルニアが出ていても痛みがともなわないケースもありますし、手術でヘルニアを取っても腰痛が再発するケースもあります。

なぜかというと、ヘルニアが原因の腰痛の方が少ないからです。
結果としてヘルニアが出ているだけで、ヘルニア自体は悪さをしていないケースがほとんどなのです。

では何が原因となっているかというと、やはり腰部筋や殿筋、腸腰筋などの緊張が考えられます。

そのような場合、針治療が有効です。

腰痛に針治療を施すメリット

腰痛の改善法や治療法はたくさんありますが、特に針治療を施すことには、どんなメリットがあるのでしょう。

患者さんが動かないで済む

腰痛のタイプはいろいろですが、特に急性腰痛を発症しているとき、診察台の上で姿勢を変えるのも困難です。

針治療の場合、患者さんを動かすことなく施術ができるので、患者さんの身体にかかる負担が少なくて済みます。

炎症を拡大させずに済む

腰痛が出ている場所に何が起きているかというと、筋繊維に断裂が起きています。

特に急性腰痛の場合は断裂の程度が大きいため、痛みも非常に強いわけです。

そんな場所に対してマッサージや指圧などの刺激を加えることは、言ってみれば傷口に塩を塗るようなもので、症状を改善させるどころか逆効果となります。

針治療のメリットは、患部に対してピンポイントで刺激を加えられることです。
そのため、炎症を拡大させずに済むのです。

深い場所まで届く

針治療に用いられる針は5分から3寸5分にわたりますが、もっとも長い3寸5分の針は10.5㎝の長さがあります。
そのため、身体の深い部分の筋緊張をピンポイントで緩めることが可能なのです。

痛みがほとんどない

針治療に用いられ針は、注射針などと異なり非常に細いのが特徴です。

そのため、ほとんど痛みを感じることなく施術が受けられます。

辛い腰痛は針治療で改善しよう!

・針治療は急性腰痛から慢性腰痛まで対応可能
・手術をする前に針治療を受けてみるのもおすすめ
・針治療は患者さんの身体にかかる負担が少ない

針治療は患者さんの身体にかかる負担が少ないため、慢性腰痛はもちろん、急性腰痛の改善効果も期待できます。

最後までご覧頂きありがとうございました。

今後ともメイプル名古屋を宜しくお願い申し上げます。

 

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