多発性硬化症とは、中枢神経系の脱髄疾患のひとつです。高緯度地域に多くみられる病気で、北ヨーロッパでは人口10万人あたり100人以上の患者さんがいる地域もあるとされています。日本での有病率は10万人に8~9人ほどとされています。
若年成人への発病が多く、平均発病年齢は30歳前後、高齢になると発病は少ないそうです。
実は病気の原因がよくわかっていないのですが、自己免疫説が有力だそうです。
これまでの研究の中で、鍼治療によって多発性硬化症による痙性の軽減と、倦怠感への改善は見られていましたが、歩行障害の改善については研究がなかなかありませんでした。
そこで、今回は歩行障害に対して鍼治療が有効かという研究をご紹介します。
レポート内容
概要
背景:多発性硬化症は、複雑で不均一な病気と見なされています。
多発性硬化症の患者の約85%は、日常生活における主要な制限の1つとして歩行障害を示しています。
鍼治療の研究では、多発性硬化症の患者の痙性の軽減と倦怠感および不均衡の改善が見られましたが、歩行に関する研究は不足しています。設計:伝統的な中国医学(TCM)のハイデルベルクモデルに従って、再発寛解型の多発性硬化症の歩行障害のある患者に鍼治療が有用な治療戦略になり得るかどうかを調査するために、鍼治療の研究を設計しました。
サンプルは、再発寛解型の多発性硬化症と診断された20人の個人で構成されていました。
歩行障害は、25フィートの歩行テストによって評価されました。結果:結果は、真の鍼治療後25フィート歩く時間の違いを示しました。
対照的に、偽の鍼治療後25フィート歩く時間に差はありませんでした。
真の鍼治療を使用した場合、偽の鍼治療を行った場合の45%と比較して、95%の症例で25フィートの歩行テストの改善が見られました。結論:私たちの研究プロトコルは、鍼治療が歩行障害を伴う多発性硬化症の患者にとって魅力的な選択肢となり得るという証拠を提供します。
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/acm.2016.0355
2017年11月1日
まとめ
このように、鍼治療の結果、95%の症例で歩行テストの改善が見られたそうです。
今後多発性硬化症のような難病で悩まされる患者さんのリハビリとして鍼治療が有効だというデータがそろってくることを願います。